いや、本当は単品の作品をのっけたいのですけど、なんか長くなってしまって。まだ載せられずにいます。何度も見返すとひどいな。この長編にも食い違いがでているので、ちゃんと直しますね。それにしても上の部屋の人の足音でかすぎるのは仕様ですかね。
戻るとエースが洗いあがった皿やグラスを食器洗い機から取り出して拭いているところだった。学生達はあらかた食べてくれたのだろう。出した料理のほとんどが綺麗に下げられていた。ここを使ってくれたくいなへの感謝代わりとして、デザートでもサービスするかな、とサッチが腕を捲り上げる。
「お、賄い?あれサンジは?」
「賄いはこれの後でな。サンジならヤニ休憩」
あー、とエースは呆れたような顔をした。そういえばお前は煙草やらないんだな、と聞くとエースはにやりと笑って、昔はやってたさ、俺、悪い子ですからと言う。トレイに載せた皿を棚に戻すべく歩いていくエースの背中を見てあいつそういえばまだ二十歳かそこらじゃなかったか、と眉をよせる。自分とて人のことをいえないくせにそういったところは感心しないな、と呟きながら自分も調理場の棚に皿を戻していく。
ついで一合枡をとりだす。本物の漆物ではないが、色合いが気に入ったので使っているそれを、学生人数分ならべて冷凍庫からバニラアイスを取り出して丸く象りながら盛る。ミントの葉っぱをちょっとずつ乗せて、木のさじをつければ完了だ。こんなに楽なデザートはない。
エースを呼んでお前も半分持てといいつけて自分もトレイを持って二階へあがる。二階は小上がりばかりがある部屋で、足元はすべて掘りごたつ式になっている。今回は団体様なので小上がりのテーブルをすべてくっつけて一つの大きなテーブルにしている。
「あ、サッチ」
「店長!」
「てーーんちょーーー」
学生達は酔っているのだろう、大層な元気さである。はいはいと手であしらってくいなのところにアイスをもっていく。これは今回のおまけだ。簡単だけど食ってくれ。くいなの顔がぱぁ、と輝く。その頭をよしよしと撫でてやると隣に座っていたゾロが視線をあげた。飲み放題メニューにはない冷おろしを飲んでいるところを見ると相当の酒好きなのだろう。
「サッチ、ありがとう!」
「どういたしまして」
「おいおっさん」
「あんだ、おっさんいうなおっさんて」
いやおっさんだろうよと手で突っ込みをいれつつゾロは何か首を傾げながらつぶやいた。俺、アンタの顔どっかで見たことある気がすんだけど気のせいか?問われたサッチははて、首をかしげる。くいなが笑いながらサッチに言った。いつぞやの試合、見られてたんじゃないかな。
「え、俺がくいなにぼこぼこにされたアレ?あーららー」
苦笑して、そりゃ恥かしいところを見られたもんだ、と笑うとゾロはなんだそれと逆に首を傾げる。てかおっさん、あんた剣使えるのかと聞いてくるので、中学のころやった以来だよと笑いながら手を振る。大学でも剣道やってる兄ちゃん相手に向かって試合なんかごめんこうむりたいところだ。
「ゾロ、あんたいっつも剣道じゃない剣道するから、一度サッチとやると楽しいかもね」
「・・・剣道じゃない剣道ってなんだよてめぇ」
「竹刀三つももってやるのはもはや剣道って言わないのよ?知らなかった?」
「知っとるわいっ!!」
サンジがイライラするのも判るな、と片眉を上げて二人を見ていたサッチはまた試合の話などさせられてはたまらない、と階下へ降りようとする。同時にエースが大量の皿を業務用エレベータに乗せていた。おいお前それ無理矢理詰め込んだらぶっころすからな、と言えば判ってるよさすがに前みたいなことしねぇって!と声が返って来る。
階下に下りるとサンジが既に皿を洗い始めていた。僅かに残っていたらしい鯛めしをもぐもぐやりながら、である。あ、しかもおいしいおこげのとこ食べてやがる。
「なぁおっさん、」
「どいつもこいつもおっさん言いやがって」
「さっきさ、裏道をすーげぇ面白い頭のおっさんが歩いていったぜ」
「俺はまだおっさんじゃねぇっつのに…ってん?面白い頭?」
「あのー、ほら、なんだっけかバナナの房をこう・・・乗っけたような…」
泡だらけの手でジェスチャーするものだから、髪に泡がついている。それに吹き出してお前頭泡ついてるぞ、と言ってやるとサンジはちょ、まじかくそ、と余計に酷くしているので堪えきれずに腹を抱えてしまった。
「何わらってんだサッチ・・・ってサンジそれ」
エースが苦笑して頭の泡をとってやる。雑巾で。いやそれあんま綺麗な雑巾じゃねぇだろちょっとまてそれぇぇぇとサンジが絶叫しているのもおかまいなしだ。ごしごしと取ったあとエースがそれで?とサンジに問う。
「?」
「バナナを乗っけた頭の人がどうしたんだ?」
「いや、裏通りを歩いていったからよ」
弾かれたようにサッチに顔を向けるエースの顔を正直見たくない。どうしてこう、あの男は俺のまわりをちょろちょろと歩き回っているのか。バナナの房を頭に乗っけた男など、サッチの知る限り一人しかいない。いや、サッチに言わせればあれはパイナップル頭なのだが。
「まぁその男、また会うだろうさ近所にいるんだったら」
「…だよな」
ほれ、あいつら帰ったら賄いだしてやっから頑張れ、と二人を励ましてやる。サンジが、なんで今日はラキさんがいねぇんだよ、とぶーたれていたが、ラキは今日はデートである。そこにシフトを入れてやるなんて非道すぎっだろ、とエースが笑う。どうせなら俺とデートしてくれたらいいのにとなおもぶーたれながら皿を洗い続けていたサンジは所々に残っている食材をぽいぽいとエースの口に放り込んでいる。
完璧残飯処理班にされてやがるな。
[3回]
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