忘れてました。これ、オリジナルの女聖闘士(夢小説だったもんで; 出てきます。
アニメエピGその他無視です。
おk?
追捜
久々に来たアメリカの空気はあの時と同じようにどこか息苦しかった。ここんところ正直聖域から出ていなかったこともそれの一因だろう。しかも今回はデスの瞬間移動は使わずに昔と同じように飛行機という交通手段を使っての訪米だ。
大体、今回またこの地に踏み入れたのにはある一方がデスの元に来た事と、リタが聖域の隔離棟にいないことが発覚した為だ。聖闘士ともあろうものが三ヶ月以上も隔離されていたことにまず疑問を抱くべきであったが、よほど面倒な病なのだろうと別段気にもしていなかった事が彼らの脚を鈍らせた。しかも真相を隠蔽していたのがシオンを始めとするあの三人なのだからどうしようもない。
「久々だな」
「こうやって飛行機にわざわざ乗ってくる事が、だな」
「……」
「あー、マジであいつ面倒な事してくれる」
「全くだ、何が自分の価値を見失っただ。阿呆すぎて逆に笑えてくる」
二人がなにやら言っているのを右から左に聞き流しながら男はふらりとマンハッタン行きのバスへと乗り込んでいく。その背中を見て二人は肩を竦めつつ後に続いた。あの男はいつになったらリタに対する執着を理解するのだろうか。魂が消える瞬間にでさえ奴は、シュラはリタ、と名を呟いた。共に生まれ育ったわけではないが、それでも魂の根幹から繋がっているのだと、彼らは悟っていた。
なのに、当の本人達は何も理解していない。執着などしていない、それは束縛することと同義だといって口をそろえる。それでこの男の静かな内の混乱と怒りはどう説明しろというのだ。全く。セレスに鼻の下を伸ばしていたかと思えば、結局はリタがいなければ生きていけないほどに生活が荒れるわ、リタが聖域に居なかった事をサガやシオンにまで怒気迫る勢いで詰問するわ、目もあてられぬ。
ブロロロ、と地球に優しくない音を立てながらマンハッタン行きのバスはエンジンを唸らせてハイウェイを疾走していく。微かに漂う異臭は、バス後方にお粗末ながらくっついている手洗いからのものだろう。デスマスクは首を左右にコキコキならして、狭い座席にその長身の身体を埋め直しながら、通路を挟んだ隣に座る黒髪のスペイン人に尋ねる。
「勢いで来たは良いものの、お前、当てがあんのか」
「……とりあえず、教会に」
「あー、あのチャコっていう豪快な女性のいるところだな」
「リタなら一度は立ち寄っているだろうから」
「……エリスの為にか?」
「いや、なんとなくだ」
ちなみにエリスというのは教会の建物を使って運営されている孤児院に住んでいた齢260歳ほどの老婆である。前代の南十字座の聖闘士として童虎、シオンと共にあの酷かった戦いを行きぬいた数少ない英雄だった。そして、アテナが童虎にかけたミソペタメノスをエリスにもかけていた途中で女神は力尽き、彼女にかかった不死の法は不完全におわり、彼女はつい2,3年ほど前にリタやシュラ、ディーテに見送られながら、デスの手によって冥界へと誘われて行ったのだ。
リタは泣くかと思ったが、逆に笑っていた。楽になれて良かったな、と一言呟いて、涙雨の降る外へ出て行き、人知れず涙を雨で洗い流したのである。
窓を流れる景色はいつも任務で来る時のそれとはまた違い、どこか新鮮さを覚える。常に瞬間移動を使って移動するか、その人には見えぬスピードで行動するかなのだから当然といえば当然である。
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