その島は貴族や富豪が沢山暮らしている為に基本的にドレスコードが暗黙の了解であった。その中に紛れ込むような仕事を見つけてきたサッチが悪い、とマルコは胸中で舌打ちをする。モビーは海軍がいらぬ目くじらを立てないように島から遠く離れた場所で停泊している。この島に上陸するのには訳がある。
長きに渡ってあちらこちらを行き来していたモビーには食料こそ保存食が残っているが、飲料水がまったくと言っていいほど残っていなかったのだ。だから水は無駄に使うなとあれほど言い含めたというのに。思わず頭を抱えたくなるが、自分とて誤算があったのは否めないのだから仕方ない。
その上、だ。モビーから出した小さなキャラベルに乗り込んだのはサッチの隊員とマルコ、それになぜか付いて来たエース。マルコに関してはいつものことだし、水の補給に関していなくてはならない人物である為にはずせないが、どうしてまたエースがくっついてきたのか二人して首を捻ったものである。
エースは人懐っこい笑顔をみせながら言う。これも社会見学の一環ってね。まだまだ青いとエースをからかうがそれを逆手に取られると断りにくいのも事実。それにかわいい弟分だ。
「はいはいこちらイケメン隊長」
「余計なこと抜かしてるとお前からスナイプするよい」
「冗談は頭だけにしとけよパイナップル野朗?」
よーしてめぇいまからすぐにロジャーのとこに逝けよい俺が許すといいながらマルコは塔の上からサッチに向けて照準を合わせる。するとその動きを知っていたかのように、スコープ越しに目があった。その口元はくすりと笑っている。腹に据えかねてドラグノフのトリガーに指をかけると、相手も読んでいたかのようにRPGの先をこちらにむける。
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