「神同士なのですから」
そういってアテナはこともあろうに玉座の間にある玉座の前に三角座りをして来る
客人をまっている。アステリオンがアテナ、それはと突っ込みを入れかけるが、そ
の前に神官やリタに盛大に小言を言われているのをみて、思いとどまった。これ以
上追い討ちをかけるのは酷だと思ったのである。
「沙織嬢、いやアテナ、あなたがそのようなことをする必要はないのですよ」
「だってリタ」
「…だってもへちまもないでしょうに。せめてお立ちなさい」
「しかたないわね…」
まるで従姉妹などに怒られる子供のようだ、とアステリオンは思った。頭に手をや
りかけるが、次の瞬間にその行為は自重される。玉座の間の外、廊下にいた門番
の声が響いてきたのである。
「参りました」
ぎぃ、と古めかしい音を立ててジャミアンとハロルドがまず姿を現し、魔鈴に先導さ
れて客人は現れた。遠く離れていてですらあのように巨大に感じられた小宇宙は、
ここにきて更にその圧力を増す。
す、とまずリタが膝を折って礼をするのにならって、周囲の神官達も不服そうにし
ながら膝を折る。沙織はその中で一人立ち上がり、客人へ楽しそうに声をかけた。
「お久しいわね、ペルセポネ」
「本当に」
まるで井戸端会議に久々に顔をだした友人へ声をかけるかのような風情で二人は
対面した。シャイナがあきれた視線をリタとアステリオンに送るが、当のリタは肩を
竦めるだけだ。こんなんで大丈夫なのかと心の底から心配になる。そんな中、ペル
セポネが、本題を切り出した。
私が今日ここにきたのは他でもない。私の夫を含め、多くの犠牲を出したこの聖戦
のことについてだ。ペルセポネは自虐するように笑んでから話を続ける為に言葉を
つむぐ。
「私は冥界の女王だ。そなたが協力するならば、今回の犠牲者を復活させることが
できるやもしれぬ」
「協力、というとなにか私があなたに従うような意味にとれるわよ、ペル」
「従えと言っている訳ではない」
現に、こうして私はここに訪れている上に、我々冥界は聖戦で敗北したのだからな。
薄らと笑う彼女はおもむろにリタへ視線を送って、そこの貴女、ちょっといいかしらと
声をかける。かけられたリタは音もなくペルセポネの側に近づいて跪く。
「私の杖の封印と、冥界にある封印をとかねばならない。そなたら聖闘士の力を貸し
てほしい」
「な」
「ペルセポネに協力してください、リタ」
「しかし、アテナ」
「拙い力ではございますが、お力になれるならば」
リタの反論の前にアステリオンが声をあげた。何を、とアステリオンを振り返ると彼は
小宇宙で話す。彼女が頼みの綱なのだからここは従え、教皇。
「…私共聖闘士、アテナとペルセポネの御為ならば」
リタが不服そうな顔を隠しもせずに口上を述べる姿をみて、思わずあの馬鹿、と半眼
になった魔鈴とアステリオンがふと互いの同じ視線に気がついて苦笑した。
アテナはそんな三人の様子に気付いたのか、さりげなくペルセポネを促そうと尋ねる。
「それで、貴女の杖はどこにあるのですか?」
「アテナも知っているだろう?エリシオンに置いてある」
ただし、今の私は完全な覚醒体ではなくて、あの場所にとりに行く事ができないのだ。
困ったように笑いながらペルセポネは続ける。あぁ、気にするな、エリシオンとはいえ、
今は冥界の秩序が崩れ始めていてな、人間界のどこかに流れ着いているようだ。
なんで自分でいかんのだこいつ、と思ったのはリタ以下皆同様であったようだ。
「もちろん杖はとりにいく。だが、探すのを手伝ってほしいといわなかったか」
なんでこっちの考えている事をよめるんだこの人は、と思わずあきれたのも以下同様。
それから、封印が冥界にあるとはいったものの、結局その封印も今は地上に流れてい
るようだ。
まるで無理難題が笑顔で歩いてきたようなものだ、とその場にいた聖闘士達は思った。
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