サックスを持っていたのはトルネード、ドラムを叩いていたのはダイブと言った。奇しくも各集団から一人ずつ集まった形である。ライトはともかく、ワイリーナンバーやブルースの名の下に集まった自分がいて大丈夫なのかと疑問に思ったものだが、それはそれ、とにかく皆音楽が好きであることには変わりはなく、音楽が彼らを繋ぎ合わせたと言っても過言ではない。
バブルと一緒にあのスタジオの扉を開くと、そこにはまだダイブしか居なかった。
「あれ?トルネードは?」
「さっき連絡があった。つれてくるはずの奴が緊急の用事でこれなくなっただと」
「あぁー、それはしかたないよね」
あの子忙しい身だし。と呟いたバブルに男は不思議そうに首を傾げて問う。知り合いなのか。その問いにはダイブが答えてくれた。なんだウェーブ、知らないのか?トルネードがつれてくるっつったらスプラッシュしかいないだろう。
「スプラッシュ…」
「海難救助やってるからなぁー」
海は常に危険がいっぱい…ってか。溜息をつくように電子ピアノの前に座ってぽろりん、と鍵盤を弾いたバブルは、しょうがないから三人でなんかやろう。と提案する。
キース・ジャレットトリオとかどう?吉澤はじめもいいんじゃないかな。ぽんぽんと名前は出てくるが一行に決まらない。
「インディゴ・ジャム・ユニットはどうだ」
最近聞いていたフュージョンのトリオを挙げると、それいいな!とダイブから賛成の声が上がる。だが逆にバブルが悲鳴をあげた。あんな難しいのを初見でやれっていうの?!
「お前ならできるだろう」
「…君、そういうのきっと無意識で言ってるんだよね」
「は?」
「女の子相手のときはあまり喋らないほうがいいかもよ」
「…??」
ダイブが苦笑しているのを不可思議そうにみやりながら、とりあえずバブルの威圧に負けたので素直に頷いておく。
結局トルネードは三十分遅れてきた。すごく残念そうな顔をしてスタジオの扉をあけてきたのである。
「遅かったな」
ダイブの声に苦笑を返しながらトルネードは溢す。何もこんなときに緊急事態が起こらなくってもいいよナァ。
バブルもちょっと笑って、ふわり、と立ち上がり、トルネードに言った。しょうがないね。じゃあ今度、スプラッシュに一応君の為の場所はあるからって言っといてね。
結局ウェーブはそのスプラッシュとやらにあえずに三ヶ月ほどをすごすのである。
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