かつてその地には雪女が住んでいると言われていた。雪女は毎年冬になると三人、必ずどこか遠いところにつれていくという。
平は雪に埋もれるようにして道を進む。早く帰っていろりの暖かさに触れ合いたい。そればかりが頭を支配していた。今頃綾部やら斉藤が火鉢を暖めて平の帰りを待っていることであろう。
ふわふわと舞う雪を恐ろしげにちらりと顧みながら、平は白く覆われた道を急ぐ。悴んだ手はもう感覚がない。凍傷になればその指は切り落とすしか方法が無くなってしまう。
ちりりん、
鈴のなるような音が、聞こえた。
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