「おや、珍しい顔じゃないか」
「今日もぼったくられるのかねぇ!フッフッフッフッフ!!」
ピンクの毛玉は笑いながらぼったくりと既に犯罪を示してなら
ないバーに足を踏み入れる。カツカツと足を勧める先にはにっ
こり笑いながら椅子をすすめるシャクヤク。
「とでも思ったかい何しに来たこのフラミンゴ」
「おーこわ、流石冥王の嫁だけはあるわなフフフフ!」
遠慮の欠片もなくそのどでかい図体を椅子に滑り込ませてから、
男は酒を頼んだ。今日は手持ちが少ねぇんだ、ちょっとはまけ
てくれねぇか。
そういって肩を揺らす男を半眼に、口元は笑みの形のまま煙
草を咥え直してウォッカを取り出すと、それごとどーんと突き
出した。
「一億」
「はいはい」
フフフフ!とまた無駄に耳にこびりつく笑い声を発しながら、
男はつい、と指を動かした。扉がどかん、とあいたと思ったら
そこにいたのは。
「…趣味が悪いねぇ」
「…俺もそう思う」
眉間に皺を寄せて、オールバックの髪を僅かに乱した男は至
極面倒くさそうに男の操るまま身体を動かして金をそこに置く。
全てを諦めきったようにみえるその顔。しかし、その金色の瞳
はギラギラと燃え盛っており、まだ何も諦めていないことを物
語っていた。
「…なんだってこんなピンクの毛玉につかまっちまったのさ」
「え、そっち?」
拍子抜けした顔でシャクヤクを見やると、彼女はあきれ返っ
た面で煙草をふかしていた。といてやりなよ、その子は此処に
来る事を嫌がってたはずだけど。
「…おい、余計な事を話すなシャクヤク…!」
「えぇ?だって仕方ないだろうさ。世界政府を作った20人の
王、それの護衛をしていた一族の末路を知らない者はないさ」
「…ほぉ」
しかもクロコダイルちゃんの親父ときたら、随分と酷かった
みたいねぇ。あんたが海賊になりたいって思うのもわかるって
もんさね。
うちの人もさんざん怒ってるけど、けっきょくあの人一人で
海軍全部を相手にはできないからねぇ。
シャクヤクは笑った。
[2回]
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