「…なに、え、お前そんなことで最近やたら悩んでたの?」
「いやだってよ、これ、新米の俺が言う事じゃなくね?」
「まぁデューだってそんなつもりも無いんだろうしなぁ」
「でも、アイツが音痴だってのは周知の事実だろうがよい」
テーブルを囲んだ四人が頭をつき合わせて盤上を睨みながらそれぞれに思い思いの体勢でつまみやら酒やらを片手にカードを選ぶ。サッチがハートの10をさり気なく置いたついでに皿からハムを一切れさらっていく。イゾウもクローバーの4を置いてから猪口でいっぱい呷っている。スペードはといえば、8から先も3から先も進んでいない。エースが手持ちをぎりり、と睨みつけながら仕方ない、とばかりにダイヤの9を出す。
んで、と先を促しながらマルコがさり気なくチーズを一切れ口にいれた。エースが次アンタだろ、と自分の前においているパス用の爪楊枝の残り数を何度も数え直している。どう考えてもあと一本しかないのだが、もしかすると二本だったりしないかという一縷の望みをたくしているのだろう。
「あぁ俺だったかい」
「そーよマルコちゃんはやくスペードの2出してやりなよ」
「だぁれがマルコちゃんだこの野朗、つか人のカード覗いてんじゃねぇイゾウ」
「そういうサッチだって早くダイヤの10だしなよ」
お前まで覗くなあほ、とエースの眉間にデコピンをかましながらサッチは煙草を咥える。エースが、えー、煙くなるから吸わないでよと眉をしかめているのをみて、お前の部屋でやることになった運命を呪えばぁなどといいながらマッチを擦った。
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